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執筆者の写真yamashina shigeru

推譲

今朝は新年最初の朝活大学素読会でした。


所謂國を治むるには、必ず先ず其の家を齊うとは、其の家教う可からずして、能く人を教うる者は之れ無し。

故に君子は家を出でずして、教を國に成す。

孝は君に事うる所以なり。弟は長に事うる所以なり。慈は衆を使う所以なり。

康誥に曰わく、赤子を保んずるが如しと。心誠に之を求めば、中らずと雖ども遠からず。

未だ子を養うを學びて后嫁ぐ者有らざるなり。

一家仁なれば、一國仁に興り、一家讓なれば、一國讓に興り、一人貪戻なれば、一國亂を作す。其の機此の如し。

此を一言事を僨り、一人國を定むと謂う。


国を治めるには、必ずまず家をととのえることがなぜ大切なのか。

自分の家人もよく教えることができない者が、人を教え導くことはできない。

国とは家の集まりであり、家は人の集まりだ。

だからこそ、上に立つものは、家を出なくても教えを国に成して、国を立派にしていくことができる。

なぜならば、家の中での親孝行、兄弟の関係、子への慈しみ、根本は同じだ。


「民に親しむ」とはどういうことか。母親が我が子を育てるような真心があれば、教えてもらわなくても、子を育てる事ができるもの。そこに、一体感と誠の心がある。


つまり、一家が仁の心でまとまっていれば、国も仁の心を大切にするようになる。一家が譲り合う精神を大切にしているのなら、国も譲り合いの心を大切にするはず。


ただ、物のはずみによる大きな変化もあることを忘れてはならない。

一人の人間のちょっとした言葉が、大きな事件を巻き起こす、時代を変えることすら起きる。

だからこそ、一人、一言も非常に大切なのだ。



今回は、この部分にでてくる「譲」に注目したい。

二宮尊徳が読んでいる書物が「大学」だということは有名だ。

予測でしかないが、二宮尊徳の思考に大きな影響を与えた部分が、今回の部分なのではないか。





二宮尊徳のことば


人たる者は、知恵は無くとも、力は弱くとも、今年の物を来年に譲り、子孫に譲り、他に譲るの道を知りて、能く行けば其の功必ず成るべし。

二宮尊徳について、そんなに詳しいわけではないが、飢餓や災害で困窮している多くの村を助けた功績。

具体的にどんな風に村を再興したのか。その方法が、一に勤労、二に分度、三に推譲である。


まずは、まじめに働くこと。そして分度をわきまえること。

さらに推譲、ゆずるということ。

すごく具体的な手法がこれだ。



たとえば、1か月の収入が20万円だとする。

そのうちの半分の10万円で生活をする。そこには、勤労と分度の精神が息づく。


そして、5万円を自分の将来のためへの貯蓄や投資へ。

残りの5万円は地域や友人を応援、サポートするために使う。


こういった生活を続けていけば、その村は、一度の災害から復興するだけではなく、将来にわたって安定的に暮らすことができるようになる。


そういった考えだ。



二宮尊徳が残した言葉をもうひとつ紹介する。


推譲は創業の道なり。

分度は守成の道なり。

推譲によって興らざる者はあらず。

分度によって保たざる者はあらず。


いまちょうど、三国志を呼んでいるが、人は分度を守れず、地位から転落していく。それも何度も何度も同じ過ちを犯す。


二宮尊徳が、俊腕の経営コンサルタント、地域再生請負人に思えてくる。

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