top of page

信用創造

マネーバイアス

ピーター・カーニック 著


1番目の嘘

銀行は利ざやでたくさん稼いでいる



ある不思議な話があります。

黒海沿岸の、すっかり寂れた小さな町。

人々は借金を抱え、生活は苦しい。

そこへある日、一人の旅人が訪れます。

彼はホテルのカウンターに100ユーロ紙幣を置き、部屋を見に行くと言って2階へ上がっていきます。


すると――

ホテルの主人はその100ユーロを持って肉屋へ借金を返しに走り、

肉屋は養豚業者へ、養豚業者は販売業者へ、

販売業者は町の遊女へ、遊女はホテルに――

そして、100ユーロ紙幣はぐるりと一周して、再びホテルのカウンターに戻ってきます。


ちょうどそのとき、旅人は「気に入る部屋がなかった」と言って100ユーロを持って去っていく。

誰の手にもお金は残らず、旅人も町に何も残さなかった。

けれど――町の誰もが借金を返し終わっていたのです



登場人物たちは誰も現金を得ていない。

でも、100ユーロが町を一周しただけで、全員の「負債」が消えた。

現金は使われてないのに、信用の移動で関係性(債務債権)が精算された。


つまり、現金より、信用が町を回していた。

100ユーロは町の経済を一瞬で循環させ、人と人の関係性(債権と債務)を解きほぐした。



そしてもう一つ。


「銀行は利ざやで儲けているのか?」という問い。


たとえば、銀行は100ユーロを預かり、2%の利息を預金者に払う。

一方で、その100ユーロを5%で企業に貸し出す。

この場合、5%−2%=3%が銀行の“利ざや”だと単純に考えがちだ。


100×5%=5ユーロ

100×2%=2ユーロ

5ー2=3ユーロ

 

そうか!銀行って3%(この場合は3ユーロ)を稼いでるんか…ってあってる??



このとき、銀行自身が出したコスト(運用のための経費)は、1ユーロだとする。

3ユーロの利益を1ユーロのコストで得たことになり、実際の利益率は200%になる。


利益率=2ユーロ(利益)/1ユーロ(必要経費)×100%=200%

そう、3%じゃなくて200%!


さらに、もしこの運用費1ユーロで100倍の取引まで、システム上可能なのであれば…。

その利益率は文字どおり“無限大”に近づいていきます。


利益率=299ユーロ(利益)/1ユーロ(必要経費)×100%=29900%



ここでも、銀行が動かしているのは「お金」ではなく、他人の信用。

信用の流れを操作し、管理し、増幅しているのです。




この2つの話を並べてみると、共通点は。


「お金は流通することで初めて意味を持つ」

「本当に価値を動かしているのは、“信用”の流れである」



さらに、この構造は、なにも「お金」だけに限った話ではないのでは?


モノも、サービスも、思いやりや感謝の言葉も、信用を土台にして人から人へと渡っていく。

それが回り回って自分に返ってくる。

それが社会であり、経済であり、人の営みの本質なのかもしれない。



感謝の言葉で元気になる。

それが別の誰かへの優しさに返っていく。

経済では測れないが、連鎖的に社会を豊かにする力がある。


100ユーロがぐるぐる回って町を救ったように、思いやりも、時間も、知恵も、使わなければ腐るけれど、循環すれば、それ自体が「豊かさ」になる。



これが、なぜか「お金のこと」とだけとらえると100ユーロの話も銀行の話も、何か胡散臭いこと、疑念、思考停止して考えてしまう。

ここに一体どんなバイアスが存在しているのだろう。



最新記事

すべて表示
お金と「Being」の関係

マネーバイアス ピーター・カーニック 著 8番目の嘘 お金は政府や中央銀行が作っている 実は今手元に「マネー・バイアス」の本がなく、記憶のある内容で感想をまとめたい。 まず、「お金は政府や中央銀行が作っている」という言葉に含まれている感情に近い意味を考えると。...

 
 
 
慈悲

マネーバイアス ピーター・カーニック 著 7番目の嘘 お金があれば安心だ 今回の箇所の内容とブログの内容がずれるかもしれないが、本書にある言葉と最近興味を抱いた言葉が、なんとなくつながっているように感じた。 脱線する内容になるのだけど、書き残したい。...

 
 
 
無条件の存在

マネーバイアス ピーター・カーニック 著 6番目の嘘 私が存在しているのはお金のおかげだ タイトルだけを読むと、当たり前なんじゃないかと思える。 むしろ、「私が存在しているのはお金のおかげだ」と思っている人は、ほとんどいないんじゃないか。...

 
 
 

コメント


bottom of page