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執筆者の写真yamashina shigeru

仕事は生きものだ

職業と人生

田中良雄 著

読了



朝活大学素読会で出逢った本。

著者は、富山県出身。

 

一隅を照らすもので、私はありたい。

私のうけもつ一隅が、

どんなちいさい、みじめな、

はかないものであっても、

わるびれず、ひるまず、

いつもほのかに照らして行きたい。


この詩を書かれた方だ。



仕事は生きものだ

仕事とは何か。

このテーマにはこれまで何度も向き合ってきたが、「仕事は生きものだ」という視点に出逢ったのは初めてだ。

仕事を命ある、心ある生きものとして接することが書かれてある。



著書の中で心に残った3つのエピソードを紹介したい。


王陽明と弟子との会話


王陽明は、中国の儒学者であり陽明学を提唱された方だ。

陽明が弟子に「学問をやっているのか」と問う。

弟子は「仕事が忙しくて学問ができていない」と答える。

その返答に対し、陽明はひどく叱られた。

「日常の仕事が、そのまま学問である」と。




ある豆腐屋の主人


彼は、毎日たった三箱の豆腐をつくることを終生の仕事としていた。

来る日も来る日も打ち込んで作り上げることに、無上の楽しみと悦びを感じていた。

どんなに売れても三箱以上は作らない。

「みんなからうまいと褒められ、妻子も何不足なく家業に養われていく。」

「それがありがたく、もったいない。」

彼は、すこしも世に知られることなく、静かに生涯を終える。




ヘリゲルと弓術


ドイツ人の哲学者が、日本人の生活に溶け込んでいる生きた仏教に直接触れてみたいと始めた弓術。

師弟関係の中で、多くを学んでいく。

脱力、無心、師弟関係、信の力。



之を手に得て心に応ず

口に言うこと能はず

数有りて其の間に存す


自らの身体を使い、熟練を重ねていくことで「コツ」というものを得ることができる。

それは、どうしたって言葉で表現できるものではない。

しかし、明らかにカタチある作品として表現できる。



この身体から得る知識こそ、日本人の得意とする分野であると著者はいう。

東洋思想と西洋思想の大きな違いはここにあるのだろう。


仕事に没頭し、その中で道を志し、身体知を活かし、「コツ」を体得していく生き方。

それがなぜ大切なのか。

 

人として生まれ、生きていく。

目の前にある食べ物、衣類、生活用品、家。

どれもが、誰かの働きによって生まれている。

自分が生きていくということは、誰かの働きによって支えられている。

 

そのありがたくもったいないと思う心を、どう恩返しすべきか。

それは結局、自らの働き、つまり、仕事の只中でしかない。

 

そういった気持ちが込められた内容です。

 








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