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価値、関係性、イマココ

マネーバイアス

ピーター・カーニック 著


24番目の嘘

カジノのような投機的取引こそが、金融システム改革によって解決すべき問題だ



この章は、一見すると

「投機は悪だ。だから規制すればよい」

という話に見える。


しかし問題は、投機家そのものではない。

投機を生み出し続ける、金融システムの構造そのものにある、ということだ。

その構造を、著者は「カジノ」に例えている。



1.利子の支払い


カジノでは、プレイするために現金をチップに替える。

もし手持ちがなくなれば、さらに借りることもできる。


しかし借りれば、当然利子が発生する。

しかも返済を先延ばしにするほど、その利子は増え続ける。


お金を借りることは、未来の自分から前借りすることだ。


その結果、人は

もっと利益を出さなければならない。

もっと早く結果を出さなければならない。

と追い立てられる。

特にカジノのような世界の中では。

一人の人間としての信用を重視してお金を貸してくれたわけではない。


利子は、単なる金融コストではなく、

未来への不安を増幅する装置にもなっている。



2.仲介手数料


カジノは、誰が勝とうが負けようが、胴元は必ず儲かる。

なぜなら、場を提供し、取引ごとに手数料を取るからだ。


金融市場も同じである。


株を買う。

売る。

また買う。


そのたびに、証券会社や金融機関には手数料が入る。

しかも、取引が高速になればなるほど、その利益は増えていく。


ここでは、投資家の成功よりも、「取引量」そのものが価値になる。

すると、本来投資家と起業家、または、銀行と投資家の間にあるべき、


信頼

可能性

関係性


が見えなくなってしまう。



3.注意の矛先


投機的リターンを目指し始めると、人は次第に「実体経済」から離れていく。


誰の役に立っているのか。

何を生み出しているのか。

どんな価値が生まれているのか。


そうした問いは、次第にわずらわしく感じられてしまう。


代わりに見るのは、


株価のチャート。

数字の上下。

短期の利回り。


つまり、価値そのものではなく、価格だけを見るようになる。

注意の矛先が、現実世界から数字へ移ってしまうのだ。


これは単なる投資行動の変化ではない。

意識の置き場所の変化である。



ここまでをまとめると、


利子は、未来を奪う。

仲介手数料は、関係性を遠ざける。

注意の矛先は、現実を見えなくする。



これはカジノや投機的取引だけの問題ではなく、金融システム全体に埋め込まれた構造なのではないか。


つまり金融システムは、


時間を奪い、

つながりを奪い、

意識を奪う。


その結果として、投機という「症状」が現れている。

だから、投機を規制するだけでは足りない。


その奥にあるのは、


もっと持たなければ安心できない

という人間の欠乏意識であり、


数字こそ価値だ

という社会の思い込みであり、


本当の自分から離れている

という在り方の問題でもある。


そう考えると、金融システム改革とは、制度を変えること以上に、

自分の注意を、どこに向けるかを取り戻すことなのかもしれない。



価格ではなく価値へ。

数字ではなく関係性へ。

未来への不安ではなく、今ここへ。


このテーマは、ちょうど今朝の音読会のテーマとも重なった。


人生とは長い時間をかけて自分を愛する旅である(樋口耕太郎著)

「ハタラク」の章に、こんな話がある。


薬師寺の元管主、高田好胤 は、薬師寺 金堂再建のために約10億円の資金を集める必要があった。

資産家の申し出を受け入れれば、すぐに再建できた。

けれど彼は、その道を選ばなかった。


「一人でも多くの人の心に仏教の種をまく」

そのために、一人1000円の写経勧進を全国100万人から募るという、壮大な遠回りを選んだ。

約8000回の講演を続け、7年目に100万巻を達成し、金堂は再建された。

その後も写経は続き、2019年時点で850万巻を超えたという。



この 高田好胤 の選択は、まさに


価格ではなく価値へ。

数字ではなく関係性へ。

未来への不安ではなく、今ここへ。


という実践だったのだと思う。


価値を生み、関係性を広げ、写経という行為を通じて「今ここ」を生きる人を増やしていった


では、いまの自分に当てはめたとき、何を感じるだろうか。



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