三軍も帥を奪うべきなり。 匹夫も志を奪うべからざるなり。
大軍であったとしても、その総大将を奪おうと思えば奪える。
それは人が守っているからである。
たとえ一人の男でも、その志は奪うことはできない。
男の心の中にあるからだ。
(「実践・論語塾」安岡定子著)
まず志を抱く。
志とは
1、心に強く思ったこと
2、私利私欲がないこと
3、自分で思ったこと
である。
この3つの条件をクリアしているのであれば
誰にも邪魔をされない自分の聖域が生まれる。
聖域を持つということ、それこそ、人と禽獣を分けることなのかもしれない。
ど真ん中名刺ワークショップでは、
志を名刺にのせてもいいし、のせなくてもいい、と説明している。
一切自由である。
誰にも話さずに自分のものとしても大丈夫。
大きいこと、小さいことも関係ない。
足が速くなりたい
絵が上手になりたい
なんでもいい。
志を抱くことを自分に許す。
それは人として生まれたからこそ、誰もが手に入れることができ、どんな財宝よりも価値のあるものだ。
そして奪われることは決してない。
決してだ。
思い出したことがある。
ヤマシナ印刷を手伝うと決意したときのことだ。
今も業績は伸びているわけではないのだが。
手伝うと決めた10数年前は、いつ倒産してもおかしくない現状だった。
それでも手伝うと決めた。
そのときにどんな行動をとったのか。
もしも会社が倒産しても奪われないものを準備することだった。
ひとつが、読書だ。
会社を手伝うと決める以前の約10年近く、読書をほぼしない生活をしていた。
大学時代は月に5冊以上のペースで読んでいた。
その後、他人の思考を頭に入れることを避けたく、読書から遠ざかっていた。
その読書を再開した。
まず読書で得た知恵と心の支えは奪われない。
あの時期に出逢った本がなかったら、今の自分はないと断言できる本もある。
次に、貯金をほぼすべて使い果たし、パソコンとサーバーを借りた。
もしも倒産したら、僅かな貯金など何の意味もないだろう。
であればお金を蓄えるというより必要なものへの投資を選択した。
もし会社のパソコンを使うと倒産したときに奪われるかもしれないと思ったのだ。
そんなこと実際にはないのかもしれないが、自分のお金100%で購入したパソコンを使いたかった。
次に自分のホームぺージを立ち上げた。
さあ、まずドメイン名を決めなければならない。
はじめて白状するかもしれない。
そのドメイン名は「startaro」とした。
意味は「星太郎」、息子の名前だ。
自分の生き様を残すこと。それを誰に残すのか。
やはり息子だ。
長女には申し訳ない。息子なのだ。
仕事に取り組む姿勢をいつ息子に見られても、全く恥ずべきところがない。
もし息子が自分の仕事に興味を持ってくれたのであれば、胸を張ってこの仕事は素晴らしいと語れること。
そして、やる気があるのならば、どんなカタチになろうが受け継いでほしいという本音。
その一切の気持ちを含めてドメイン名を決めた。
その気持ちには私利私欲が混ざっているのかもしれない。
であれば、志と呼べるものではないのかもしれないが、このドメイン名を名付けた気持ちは、誰にも奪われることはない。
今も、そのドメインは生きている。
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