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思惟と実践

朝活大学素読会

今回も大きな気づきがありました。


古の明徳を天下に明らかにせんと欲する者は、先ず其の國を治む。

其の國を治めんと欲する者は、先ず其の家を齊う。

其の家を齊えんと欲する者は、先ず其の身を修む。

其の身を修めんと欲する者は、先ず其の心を正しうす。

其の心を正しうせんと欲する者は、先ず其の意を誠にす。

其の意を誠にせんと欲する者は、先ず其の知を致す。

知を致すは、物を格すに在り。


物を格して后知至る。

知至りて后意誠なり。

意誠にして后心正し。

心正して后身修まる。

身修まりて后家齊う。

家齊いて后國治まる。

國治まりて后天下平らかなり。



格物

致知

誠意

正心

修身

斉家

治国

平天下


ざっと現代語にすると


明徳を明らかにし、天下に平安を望むなら、まず自分の国をしっかり治めよ。

自分の国を治めようと思うなら、まず自らの家(親族一同)をよく斉えることだ。

自分の家を斉えようとするなら、まず自分の身を修めていくことだ。

自分の身を修めるためには、まず内なる心を正しくすることだ。

心を正すためには、外に表れる意(喜怒哀楽)を正常にすること。

その意を誠にしようと思えば、我々に生来与えられた知(良心・良知)を極めることだ。

その知を極めるには、自分自身を正すことだ。


自分を正せば、知は至り、

知が至れば、意は誠になり

意が誠になれば、心が正しくなる。

心が正しくなれば、身は修まる。

身が修まれば、家がととのい、

家がととのえば、国は治まる。

国が治まれば、天下は平安になり、明徳もあきらかになる。



同じ内容を順番を逆にして伝えているのは、強調したい大切なことなんだろうと、あまり深く考えていなかった。

しかし、この前半部分と後半部分は、まるで違う内容だということに気づいた。


前半部分は「思惟の過程

後半部分は「実践する過程


思惟の過程とは、思考を深めていくことで、目的を達成するために何をすべきか、地図を描き、真理を探究している。

しかし、現実には、何も変化していない状態。


それに比べて後半部分は「実践の過程」だ。


前半は、世界をどう変えるかを思う段階

後半は、自分を通して世界が変わっていく段階


同じ階段だが、歩く向きが違う。

働いている力(思惟 / 実践)が違う。



最も注目すべきところは後半部分の「~して后(のち)~」という文体なのではないか。


つまり、前半では、夢や志を実現するためには、こうすべきである。

そうするとこうなる。次はこうすべきだ・・・。

をいう具合に、思考を深く深く掘り下げていくことで、夢や志を実現するためのベストは方法を考えている。

「すべき」だと。


しかし、後半では、自分を正すと、自然にいつのまにか、知が至るよね。

そして、知が至れば、不思議といつのまにか意が誠になるよね、と。

自分の意志の力や実行力とは裏腹に、「いつのまにか」「自然に」「勝手に」変化する世界を示している。


思考で考えた「すべき」の世界と、実践の中で獲得する「いつのまにか」の世界が、ひとつとなる世界。

こうすべきだからやっている」 から「自然とそうせずにいられない」 へ変わる。


ここの重要性を語っているのではないか。



また、なぜ前半が「思惟の過程」を紹介しているのか。

これにも意味があるのだろう。


思考で理解したことを実践することが、人間にとって相当難しい。

実践することへの恐れから、いつのまにか別の方法を選ぼうとする。

やっぱり怖いのだ。


格物→現実を直視しない

致知→「知ったつもり」「正しさへの依存」で止まる

誠意→心と行動が一致していないのに、誠実さだけ掲げる

正心→感情や影を避け、綺麗な状態だけ求める

修身→生活習慣・癖が変わらない

斉家→関係性・コミュニケーションに摩擦がある

治国→社会影響・仕事に責任を持てない

平天下→世界の調和より、自分の安全を優先


正しいことを語る

理想を語る

展望を語る

これらは 思惟を実践に変えない最大の罠にもなりえる。

理解したことで満足してしまう。


「こうすべき」という思考をどれほど深めても、答えにたどり着いても、社会は変わらない。

ここから実践の道にどうつないでいくか。


ここの大切さを伝えるために、同じ内容を順番を入れ替えて語っているのだろう。



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当下一念

朝活大学素読会 大學の道は、明徳を明らかにするに在り。 民に親しむに在り。 至善に止まるに在り。 止まるを知りて后定まる有り。 定まりて后能く靜かなり。 静かにして后能く安し。 安くして后能く慮る。 慮りて后能く得。 物に本末有り。 事に終始有り。 先後する所を知れば、則ち道に近し。 今回は、この後半の箇所について。 物に本末有り。事に終始有り。先後する所を知れば、則ち道に近し。 物事には必ず本と

 
 
 

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