根っことつながる
- yamashina shigeru
- 2 日前
- 読了時間: 6分
対立を超える日々の実践
他者と根源から関わり、複雑なシステムを変える七つの習慣
Everyday Habits for Transforming Systems
The Catalytic Power of Tadical Engagement
アダム・カヘン 著
読了

本書のイントロダクションに、「システムを生成的に変容するために必要な基本のあり方、関わり方、行動様式は、『根源からの関わり』である」と書かれてある。
生成
変容
根源からの関わり
どのキーワードも興味深い。
メインテーマとなる「根源からの関わり」を「根っこでつながる」と言い換えてもいいのではないか。
さらに、「根源から関わる能力を、特別な場合の例外的行動としてだけではなく、日々の実践や習慣として身につける必要がある」という言葉に惹かれた。
「日々の習慣を身につけるということは、新しく特別な能力を身につけることではなく、私たちの多くがすでに潜在的に保有する能力の障壁を取り除き、解き放つことだ」と。
いや~、この言葉もしびれます!
複雑で大きな変容を目指すためにできることは、日々の習慣の中にある。
日々の習慣でできるということは、特別な能力があるからできることではなく、当たり前のようにできることに意識すること。
つまりは、すでに変容するための力は持っているということ。
話す
聴く
見る
休む
そういったことだ。
その根源からの関わりの七つの習慣を丁寧に紹介してくれる本だ。
本書の最後には、こんな著者からの言葉が掲載されている。
本書は、私が三年前に考え始めた問いへの答えを示している。
「私たちがどのような立場にあろうと、どのような権力を持っていようと、より大きなつながり、主体性、正義に向かって自分の所属するシステムを変容するために、私たちみんなが貢献できるようにするためにはどうすればいいだろうか?」
私が導き出した答えはこうだ。
「根源からの関わりを通じて貢献すること」
ここからは「根源からの関わりの七つの習慣」を「根っこでつながるための七つの習慣」として紹介してみたい。
根っこでつながるための一つ目の習慣
責任を引き受けて行動する
「承る」と言い換えてもいいのかもしれません。
まずはここからはじまる。
今回は「承る」ことの新しい意味を知ることができた。
「システムが現在のような結果を生み出すのは、そのシステムを構成する人々が、それぞれ役割を果たし続けているから」
承る、責任を引き受けて行動するということの、もうひとつの意味は、自分が属しているシステムに機能不全があること、まじめに承れば承るほど機能不全は維持されるということ、機能不全の問題の一部に自分も関わっていること。これを認識するためだということ。
この認識があって、はじめて解決の糸口が見えてくる。
承るとは、機能不全を認識するため。
認識することで、自分の内側から沸き起こる声を聴くためにある。
根っこでつながるための二つ目の習慣
三次元で関わる
三つの次元とは、「システム全体」「その構成要素」「構成要素間の関係」、この3つすべてに意識を向けるということ。
主体、当事者、同胞といった言葉でも表現されている。
例えば、ヤマシナ印刷のこれからの変容を議論しようとしたとき、会社全体のシステムのこと、取締役としての責務、スタッフとの関係性、この3つの内、1つまたは2つのテーマで議論しても、根っこでつながっていけない。
3つの次元すべてを意識したうえで本音で語っていく。
ヤマシナ印刷は、父が社長で、3人兄弟全員が一緒に働いている。
月に一度、兄弟会議をする時間を設けている。
この時間で大切にしようとしているのが、まさにこの3次元で関わることだ。
子どものころから見てきた親が営む会社という視点、その中で働くひとりとしての視点、兄弟として同僚としての関係性、この3つに目を向けて対話できる場に育てていきたい。
そのために大切なことが本書に書かれてある。
「正直でいること、本物の自分であることから始める。これは自分自身とつながり、他の人々とつながるための非常に重要な道筋だ。なぜなら、そうすることで初めて、心と心で話し合えるから」
根っこでつながるための三つ目の習慣
見えないことに目を向ける
自分たちのシステムの外にいる人の目線を取り入れるということ。
内側にいると、どうしても見えないこと。
それを取り入れていく。
ここにどんな意味があるのか。
それは「自分の弱さとつながるため」だと書かれてある。
見えてないことに目を向けるということは、何か新しことや異質なものを取り入れるということではない。
自分自身を守るために築き上げてきた障害や殻を取り除くためだ。
そのために、外からの目が必要になる。
根っこでつながるための四つ目の習慣
裂け目に働きかける
根っこでつながろうとするとき、それを阻害している本質的な問題はどこにあるのか。
その裂け目に注意を払う。
これは、少しばかりセンスと経験が必要かもと感じた。
しかし、一番大事になるのは、「根っこでつながりたい」という熱意が、裂け目を見つける鍵になるのではないか。
「言葉で説明できないが、違和感を感じる」
この違和感に敏感になることなんだと思う。
違和感に敏感になるには、自分を好きになることだと思う。
根っこでつながるための五つ目の習慣
進むべき道を模索する
システムの裂け目が分かれば、勇気をもってそれにアプローチしていかなければならない。
そのためには行動しかないのだけど、ポイントは「実験」だということ。
直感を頼りに行動し、進みながら結果を観察していく。
実験がいい結果を得られれば、さらに行う。
うまくいかなければ、やめる。
これを繰り返していくしかない。
変容は、混乱、危機、失敗、苛立ち、挫折、失望は、当然のごとく現れる。
その都度、その現象を感じ取り、次の実験に挑んでいく。
そんなものだ。
ネガティブな現象に、心を奪われないようにしなくてはならない。
実は同じ思いを込めて作ったのが、ぼくがオーナーを務めるコワーキングスペースELABOだ。
名前の由来
E・・・実験experiment
L・・・利他Lita
A・・・適用adapt
利他の心を中心に抱きながら、実験と適用をチェーンのように繰り返していく(EAチェーン)場。
そんな意味を込めている。
根っこでつながるための六つ目の習慣
異なる他者と協働する
「自分たちが見えてない景色を知るための他者の存在」という次元にとどまらず、対話から行動、協働へ。
ひとはひとりでは変われない。
他者との対話とつながりの中で、気づきに出会い変容していく。
システムも同様。
単独では変われない。
システムを生成的に変容していくには、他者との協働が大切になる。
うまく説明はできないが「生成的」がキーワードになるのだろう。
単に変容するだけではなく、新しい未来を創る。
根っこでつながるための七つ目の習慣
忍耐強く続け、休息する
本書に興味を持ったのが、実はこの最後の習慣だ。
最後に「休息」があることに共感した。
個人の変容もそうだが、システムの変容となると、相当長旅になる。
本書の言葉を借りるなら
「死ぬまで何の有意義な変化をもたらせなかったとしても、一世代か二世代か、三世代後に、誰かが自分の志を引き継ぎ、本当に役立つことの種がここにあったと言ってくれることを願う。目指している変化を見ずに人生を送る覚悟を持っています」
諦めないからこそ、休息が必要なのだ。
これは、意外に感じるが、一番重要なんじゃないかと思っている。
素晴らしい内容。読んで見ます。ありがとうございます🙏