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民藝的佇まいがある働き方

  • 執筆者の写真: yamashina shigeru
    yamashina shigeru
  • 1 日前
  • 読了時間: 5分

マネーバイアス

ピーター・カーニック 著


5番目の嘘

最高の商品やサービスが最高の利益をもたらす


これが嘘だと。

音読会では話がでなかったのだが、このタイトルで思い浮かぶエピソードがある。

富山の実家の仕事を手伝うことになり、いろんな現実の壁にぶつかっているときに出会った本に書かれたあったように思う。

今考えると、似ているエピソードはどこにでもあるのだろうが、当時の僕にすごく大きな影響を与えた。

それは今でも自分の心に炎を灯し続けている種になっている。



ある町のはずれに、老夫婦が営む小さなかばん屋がありました。

おじいさんは皮を選び、糸を通し、ひと針ひと針、時間をかけて縫います。

おばあさんはそのそばで、紅茶を淹れたり、注文帳にそっと名を書き込んだりします。


その店で作られるかばんは、使うほどに味わいが増し、まるで持つ人の一部のようになると評判でした。

いつしか、その店のかばんは5年待ちとなり、遠くからも注文が届くようになりました。


ある日、町の若い男が訪れます。

彼は言いました。

「すばらしい仕事ですね。でも、もっと人を雇いましょう」

「機械を導入すれば、毎日10個は作れます」

「支店を出せば、年に何百、何千も売れる」

「あなたたちは儲かるし、待っている人も減ります。きっと、皆が幸せになりますよ」


彼の目はきらきらしていて、言葉には悪気もなく、むしろ善意に満ちていました。


おじいさんは、手を止めて静かに答えました。

「このかばんは、その人の顔を思い浮かべながら作っています」

「あの人には、この色のほうが似合うかもしれない、とか。使う右手が少し弱っていたから、取っ手は少し長くしておこうか、とか」

「そうやって作るには、1日に1つが限界なんです」


おばあさんも言いました。

「売れることもうれしいけれど、この人に喜んでもらえるだろうかって思いながら作るのが、私たちの幸せなんですよ」


若い男は少し戸惑い、やがて小さく笑いました。

「それもまた、いい生き方ですね」

そして静かに、店をあとにしました。


いまもその店の前には、注文を待つ人の列があります。

でも誰も文句は言いません。



この老夫婦のあり方に、憧れたのだ。

それは今でもかわらない。


自宅の横の公園で見つけた、立つ落ち葉
自宅の横の公園で見つけた、立つ落ち葉

自分の志を表現する言葉として

民藝的佇まいがある働き方

としている。


この言葉は、まさに上記の物語を踏まえた言葉だ。

「民藝」という言葉を使っている理由は、何か誰にも真似のできない特別な商品や芸術品、職人技の探究を求めているのではなく、商品自体は、どこにでも売っている大量生産された商品と特に差がないようなもの。

日用品の中に心を当てたいと願っている。

それは、当然のごとく、どれほど丁寧な仕事をしたとしても、最高の利益には繋がらない生き方なのだが。


ひとつ不思議なのは、なぜぼくはこの物語に執着に似たあこがれを感じるのか、説明できないということ。

いつからそう思うようになったのだろう。

実家の仕事を手伝いはじめたのがきかっけだと言えば、理由ぽくなるのだが、ぼくはずっと前、幼少のころからそう思っていたことを知っている。



才能とは何か。

こんな風に解説してくれた人がいる。


才能など、アンコントローラーなこと。

まず自分にどんな特性があるのか。

これは生まれる時に決まっていること。

この特性と外的環境との関係性の中に、才能は存在する。

つまり、特性も外的環境も、コントロールしようがない。

その組み合わせが才能というのなら、才能はコントロールできない。



才能を活かすこと。

最高の商品やサービスを提供すること。

最高の利益をもたらすこと。


この3つの関係性は、そうなることもあるかもしれないが、それは、「運」でしかないように思える。



音読会ではこんなテーマがあった。


「社会のニーズに上手に応えていけば、地位や利益はついてくる。

しかし、そもそもニーズに応えることと、自分がやるべきことがずれている場合はどうなるのか。」


これはビジネスの世界では、よくあることのように思う。

ニーズに応えることこそ、仕事であり、利益につながることだと。

ぼくらが生きている社会の評価基準も、そちらを求めている。



「やるべきこと」「求められていること」以外に、もうひとつ軸があるとおもっている。


・やるべきこと(musut)

・求められていること(needs)

・ワクワクすること(wants)


この3つがすべて一致している働き方は何か。

ぼくの興味はそこだ。


それはつまり、「ど真ん中を生きる」ということになる。

must×needs×wantsを探求する。



また、こんな意見もあった。

8つの資本に目を向ける。


1. 金融資本 お金、通貨、株

2. 社会資本 人とのつながり、影響力

3. 物質的資本 石、鉄、木、化石燃料、道具、建物、社会のインフラの原料

4. 生命資本 水、土、動植物、菌類

5. 知的資本 アイデアや知識、科学など

6. 経験資本 体験を通していろいろなことができるようになること

7. 精神的資本 自分より大きな「何か」を信じることから生まれる力

8. 文化資本 歴史のなかで積み上げられてきた伝統など(食文化、民謡、お祭り)


この8つに視点を獲得できるのであれば、

「最高の商品やサービスが最高の利益をもたらす」ことは嘘だとしても、「ど真ん中を生きる中で提供し続ける商品やサービスは、8つの資本のどれか(1~複数)を増やすことにつながり、資本家になれる

と言えるといいな。

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